ボイラー各部の構造及び強さ

二級ボイラー試験「ボイラーの構造に関する知識」について解説しています。

本ページでは、ボイラー各部の構造及び強さについて問う問題を取り扱います。

これは覚えよう!

皿形鏡板

皿形鏡板は、ボイラーのドラムやタンクの端部に取り付けられる円盤状の部品です。その形状は皿のように見えるため、「皿形」と呼ばれています。主に、ボイラーの水ドラムや蒸気ドラムの端部に使用されます。皿形鏡板は、球面殻、環状殻及び円筒殻から成っています。また、皿形鏡板に生じる応力は、すみの丸みの部分において最も大きいです。この応力は、すみの丸みの半径が小さいほど大きくなります

丸みが小さいと力が集中するから、応力が大きくなるんだね。

ボイラーにかかる応力

胴板には引張応力が生じます。胴板は、ボイラーの圧力容器を形成する円筒形の構造部分で、内部に水や蒸気を保持します。ボイラー内部で水を加熱して蒸気を生成する際、内部には高い圧力がかかります。この圧力が胴板の内側に作用し、胴板の外側に引張応力を引き起こします。引張応力とは、材料が引き伸ばされるときに生じる応力で、材料の引張りに対して抵抗する力を示します。

炉筒には圧縮応力が生じます。炉筒は、ボイラーの燃焼室または炉内にある円筒形の部品で、ボイラーの加熱部分です。ボイラー内部で水を加熱し、蒸気を生成する際、内部圧力が炉筒の内壁に向かって作用します。これにより、炉筒の内壁には圧縮応力が生じます。なお、圧縮応力とは、材料が押しつぶされる(圧縮される)ときに発生する応力のことをいいます。

周方向と軸方向

ボイラーのような円筒形の容器において、周方向の引張応力は軸方向の引張応力の2倍になります。

周方向の引張応力は軸方向の引張応力の2倍

同じように、胴の長手継手の強さは、周継手の強さの2倍以上必要になります。

胴の長手継手の強さは、周継手の強さの2倍以上必要

イラストで覚えましょう。周方向に力がかかるとイメージしましょう。

だ円形マンホール

ボイラーや圧力容器において、だ円形のマンホールを設ける場合には短径部を胴の軸方向に配置します。圧力容器の周方向の引張応力に対する耐性が向上し、構造的な強度が確保されます。

だ円形のマンホールを胴に設ける場合には、短径部を胴の軸方向に配置する。

イラストで覚えましょう。短径部を軸方向です。

練習問題

問題:伝熱について、次の記述は正しいか。⭕または❌で答えてください。答えは▶を押してください。

Q:皿形鏡板に生じる応力は、すみの丸みの部分において最も大きい。この応力は、すみの丸みの半径が大きいほど大きくなる。

正しくは「皿形鏡板に生じる応力は、すみの丸みの部分において最も大きい。この応力は、すみの丸みの半径が小さいほど大きくなる。」

Q:胴板には、内部の圧力によって引張応力が生じる。

正しい記述です。

Q:胴炉筒は、鏡板で拘束されているため、燃焼ガスによって加熱されると炉筒板内部に圧縮応力が生じる。

正しい記述です。

Q:胴と鏡板の厚さが同じ場合、圧力によって生じる応力について、胴の周継手は長手継手より2倍強い。

正しい記述です。

Q:胴板に生じる応力について、胴の周継手の強さは、長手継手の強さの2倍以上必要である。

正しくは「胴板に生じる応力について、長手継手の強さは、胴の周継手の強さの2倍以上必要である。」

過去問で修得

令和6年4月 問4

ボイラー各部の構造及び強さについて、適切でないものは次のうちどれか。

  1. 胴板には、内部の圧力によって引張応力が生じる。
  2. 薄肉円筒で胴板の厚さが同じ場合、周方向の引張応力は軸方向の引張応力の2倍である。
  3. だ円形のマンホールを胴に設ける場合には、短径部を胴の軸方向に配置する。
  4. 波形炉筒は、平形炉筒に比べ、熱による炉筒の伸縮を吸収でき、外圧に対する強度も高い。
  5. 炉筒は、鏡板で拘束されているため、燃焼ガスによって加熱されると炉筒板内部に引張応力が生じる。

正解 5

令和5年4月 問5

ボイラー各部の構造及び強さについて、誤っているものは次のうちどれか。

  1. 皿形鏡板は、球面殻、環状殻及び円筒殻から成っている。
  2. 胴と鏡板の厚さが同じ場合、圧力によって生じる応力について、胴の周継手は長手継手より2倍強い。
  3. 皿形鏡板に生じる応力は、すみの丸みの部分において最も大きい。この応力は、すみの丸みの半径が大きいほど大きくなる。
  4. 平鏡板の大径のものや高い圧力を受けるものは、内部の圧力によって生じる曲げ応力に対して、強度を確保するためステーによって補強する。
  5. 管板には、煙管のころ広げに要する厚さを確保するため、一般に平管板が用いられる。

正解 3

令和元年10月 問5

ボイラー各部の構造及び強さについて、誤っているものは次のうちどれか。

  1. 胴板には、内部の圧力によって引張応力が生じる。
  2. 胴板に生じる応力について、胴の周継手の強さは、長手継手の強さの2倍以上必要である。
  3. だ円形のマンホールを胴に設ける場合には、短径部を胴の軸方向に配置する。
  4. 皿形鏡板は、球面殻、環状殻及び円筒殻から成っている。
  5. 炉筒は、鏡板で拘束されているため、燃焼ガスによって加熱されると炉筒板内部に圧縮応力が生じる。

正解 2

平成31年4月 問4

ボイラー各部の構造及び強さについて、誤っているものは次のうちどれか。

  1. 胴板には、内部の圧力によって引張応力が生じる。
  2. 胴板に生じる応力に対して、胴の周継手の強さは、長手継手の強さの2倍以上必要である。
  3. だ円形のマンホールを胴に設ける場合には、短径部を胴の軸方向に配置する。
  4. 平鏡板で、大径のものや圧力の高いものは、内部の圧力によって生じる曲げ応力に対し、ステーによる補強が必要である。
  5. 管板には、煙管のころ広げに要する厚さを確保するため、一般に平管板が用いられる。

正解 2

関連問題

ボイラーに用いられるステー

ボイラーの鏡板