二級ボイラー技士試験「ボイラーの構造に関する知識」について解説しています。
本ページでは、水管ボイラーについて問う問題を取り扱います。
水管ボイラーについて
水管ボイラーは、燃料の燃焼によって生成された熱を使って水を加熱し、蒸気を生成する装置です。ボイラーの設計は、水がボイラー内の管を通ることにより、熱が効率よく伝達されるようになっています。また。ボイラー水の流動方式によって自然循環式、強制循環式及び貫流式に分類されます。
これは覚えよう!
各水管ボイラーの特徴について確認しましょう。
自然循環式水管ボイラー
自然循環式水管ボイラーは、外部ポンプを使用せずに、熱の自然対流によって水の循環を行うボイラーです。水が加熱されると密度が低くなり、自動的に上昇し、冷たい水が下から補充されることで循環が続きます。高圧になるほど蒸気と水との密度差が小さくなり、ボイラー水の循環力が弱くなります。
高圧になるほど蒸気と水との密度差が大きくなる?
まず、一般に水の体積は大きく(約1,000 kg/m³)、蒸気の体積は小さいです(約0.6 kg/m³)
水は一般的に高圧になると密度が小さくなります。水は温度が上がると熱膨張して、体積が大きくなります。また、水は圧力が高くなると沸点が上がります。つまり、水は圧力が高くなるとになると沸点は上がり、液体としてより熱膨張を起こし、体積が大きくなることから、結果として単位体積あたりの質量(密度)が小さくなります。
一方で蒸気は一般的に高圧になると密度が大きくなります。PV = P’V’(ボイルの法則)より圧力が高くなると体積が小さくなることから、結果として単位体積あたりの質量(密度)が大きくなります。
» 熱及び蒸気
したがって、高圧になることで密度の大きい水については密度が小さくなり、密度の小さい蒸気については密度が大きくなります。
水の循環は密度の差が大きいほど自然に起こりやすいです。密度差が密度差が小さくなり、ボイラー水の循環力が弱くなります。
難しいね。わかったようなわからないような。
自然循環式ボイラーは高圧になるほど良くないとイメージするようにしましょう。試験では「密度差小でボイラー水の循環力弱」と覚えておけば大丈夫です。
二胴形水管ボイラー
二胴形水管ボイラーは、その名の通り、二つの胴(ドラム)を持つ自然循環式水管ボイラーです。これらのドラムは「水ドラム」と「蒸気ドラム」と呼ばれ、炉壁内面に水管を配した水冷壁と、上下ドラムを連絡する水管群を組み合わせた形式のものが一般的です。
強制循環式水管ボイラー
強制循環式水管ボイラーは、ボイラー水の循環系路中に設けたポンプによって、強制的にボイラー水の循環を行わせます。
放射形ボイラー
放射形ボイラーは、高圧で大容量の水管ボイラーとして使用される強制循環式ボイラーの一種です。次のような特徴があります
- 炉壁全面が水冷壁: ボイラーの炉壁全体が水冷壁で作られており、これによって熱を効率的に吸収します。
- ほとんどが放射伝熱: ボイラーの蒸発部では、接触伝熱面が少なく、主に放射伝熱によって熱が伝わります。
放射型ボイラーの”放射”は放射伝熱の放射で、接触伝熱面が少ないと覚えましょう。
貫流ボイラー
貫流ボイラーは、管内で直接加熱を行い、蒸気を迅速に生成する設計のボイラーです。管系だけで構成され、蒸気ドラム及び水ドラムを必要としないので、高圧ボイラーに適しています。
貫流ボイラー = 高圧ボイラーに適していると覚えよう。
貫流ボイラーは一般に超臨界圧力ボイラーに採用されます。» 超臨界圧力ボイラー
練習問題
問題:水管ボイラーについて、次の記述は正しいか。⭕または❌で答えてください。答えは▶を押してください。
自然循環式水管ボイラーは、高圧になるほど蒸気と水との密度差が大きくなり、ボイラー水の循環力が強くなる。
💡解説:密度差は小さく、循環力は弱くです。イメージできるようにしておきましょう。
二胴形水管ボイラーは、炉壁内面に水管を配した水冷壁と、上下ドラムを連絡する水管群を組み合わせた形式のものが一般的である。
高圧大容量の水管ボイラーには、全吸収熱量のうち、蒸発部の接触伝熱面で吸収される熱量の割合が大きい放射形ボイラーが用いられる。
💡解説:放射型ボイラーは接触伝熱面が少ないです。放射型ボイラーの”放射”は放射伝熱の放射と覚えましょう!
貫流ボイラーは、管系だけで構成され、蒸気ドラム及び水ドラムを必要としないので、高圧ボイラーに適している。
過去問で修得
令和6年4月 問2
水管ボイラーについて、適切でないものは次のうちどれか。
- 自然循環式水管ボイラーは、高圧になるほど蒸気と水との密度差が大きくなり、ボイラー水の循環力が強くなる。
- 強制循環式水管ボイラーは、ボイラー水の循環系路中に設けたポンプによって、強制的にボイラー水の循環を行わせる。
- 二胴形水管ボイラーは、炉壁内面に水管を配した水冷壁と、上下ドラムを連絡する水管群を組み合わせた形式のものが一般的である。
- 高圧大容量の水管ボイラーには、炉壁全面が水冷壁で、蒸発部の接触伝熱面が少ない放射形ボイラーが多く用いられる。
- 貫流ボイラーは、管系だけで構成され、蒸気ドラム及び水ドラムを必要としないので、高圧ボイラーに適している。
正解 1
令和5年10月 問2
水管ボイラーについて、適切でないものは次のうちどれか。
- 水管ボイラーは、ボイラー水の流動方式によって自然循環式、強制循環式及び貫流式に分類される。
- 強制循環式水管ボイラーは、ボイラー水の循環系路中に設けたポンプによって、強制的にボイラー水の循環を行わせる。
- 二胴形水管ボイラーは、炉壁内面に水管を配した水冷壁と、上下ドラムを連絡する水管群を組み合わせた形式のものが一般的である。
- 高圧大容量の水管ボイラーには、全吸収熱量のうち、蒸発部の接触伝熱面で吸収される熱量の割合が大きい放射形ボイラーが用いられる。
- 貫流ボイラーは、管系だけで構成され、蒸気ドラム及び水ドラムを必要としないので、高圧ボイラーに適している。
正解 4
二級ボイラー技士過去問 令和2年10月 問2
水管ボイラーについて、誤っているものは次のうちどれか。
- 自然循環式水管ボイラーは、高圧になるほど蒸気と水との密度差が大きくなり、ボイラー水の循環力が強くなる。
- 強制循環式水管ボイラーは、ボイラー水の循環系路中に設けたポンプによって、強制的にボイラー水の循環を行わせる。
- 二胴形水管ボイラーは、炉壁内面に水管を配した水冷壁と、上下ドラムを連絡する水管群を組み合わせた形式のものが一般的である。
- 高圧大容量の水管ボイラーには、炉壁全面が水冷壁で、蒸発部の対流伝熱面が少ない放射形ボイラーが多く用いられる。
- 水管ボイラーは、給水及びボイラー水の処理に注意を要し、特に高圧ボイラーでは厳密な水管理を行う必要がある。
正解 1